これまでのカジノの歴史を振り返ると数々のハイローラーと呼ばれる有名なギャンブラーがいました。
彼らは一般人の年収以上の金額を1回のベットに使います。
現実世界とはかけ離れた存在のプレイヤーたちですね。
そしてそんなハイローラーの陰にはジャンケットと呼ばれるエージェントたちがいました。
ここではそのジャンケットエージェントの仕事内容について紹介していきます。
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ジャンケット(Junket)とはどんな意味?
ジャンケットは英語で「Junket」と書きます。
意味をインターネット辞書サイトで調べるとこうあります。
weblio辞典
junketとは
意味・対訳 ジャンケット、ジャンケットのデザート(一皿)、宴会、旅行、遊山、(公費の)大名旅行
英次郎on the web
junket
《食》ジャンケット◆ミルクを凝固させた甘い食べ物。
〈主に米話・軽蔑的〉〔官費による物見遊山の〕視察旅行
〈主に英〉宴会
英ナビ
【junket 名詞】
凝乳酵素で凝固させ甘くした牛乳。
遠足 遊覧 行楽
娯楽のための旅行。
公費で役人が行く旅行。
goo辞書
ジャンケット【junket】 の解説
《もてなすの意》カジノに大金を賭ける客を紹介したり、そうした客に対して宿泊先の手配や資金の融通などを行う仲介業者。
参照元:https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%88/
ザっとまとめると、Junketには「ミルクのデザート」か「(偉い人が行く)旅行」といった意味があります。
そしてカジノにおけるジャンケット(Junket)とはgoo辞書のものがまさにそのままの意味となります。
偉い人、地位のある人(ハイローラー)をもてなすサービスマンです。
ランドカジノ側とVIP客の仲介役で、カジノで過ごす期間におけるサービス全般の面倒を見てくれる存在がジャンケット(Junket)ですね。
そんなジャンケット(Junket)がどんな仕事をしているのか?について具体的な内容を紹介していきます。
【参考資料】
・カジノエージェントが見た天国と地獄(尾嶋誠史 著)
・日本のハイローラー(森巣博 著)
マカオやフィリピンカジノでのジャンケットの仕事
ジャンケットが関わるフロア
ここではマカオのカジノを参考に解説。
マカオのカジノは主に次の3フロアに分かれています。
- 一般フロア(平場)
- ハイリミットフロア(プレミアムフロア)
- VIPルーム(ジャンケットフロア)←ジャンケットがいるのはココ
まずはそれぞれのフロアの賭け金額についてみていきましょう。
※1香港ドルはだいたい13~15円のため、14円で計算
一般フロア(平場)
- スロット・・・10香港ドル前後~(140円~)
- バカラ・・・500香港ドル前後~(7000円~)
- ポーカー・・・500香港ドル前後~(7000円~)
2000香港ドル~(28000円~)のテーブルもあり。
ハイリミットフロア(プレミアムフロア)
- 最低ベット額・・・3000~5000香港ドル(42000~70000円)
高額スロットは8000香港ドル~(112000円~)のものもあり。
高額ベットテーブルは1万香港ドル~最大200万香港ドル(14万~2800万円)。
VIPルーム(ジャンケットフロア)
1回あたりの最大ベット額は250万香港ドルほど(3500万円)。
※交渉しだいでさらに上げることも可能
1枚100万香港ドル(1400万円)のチップもある。
ジャンケットはこのVIPルームでカジノ運営に関わっています。
そしてジャンケットと呼ばれるエージェントはジャンケット業者に属しています。
マカオにそんなジャンケット業者が何百社とあります。
(コロナ禍による大幅な収益減により減少している可能性あり)
ジャンケット業者とカジノの関係
公式ホームページがあるジャンケット業者もありますが、その多くは人づてで知るのみの存在。
ジャンケットとの繋がるが持てるだけで富裕層と言えるでしょう。
そんなジャンケットが属する業者はどのようにカジノ運営の関わっているのでしょうか。
カジノ側と賃貸契約で繋がるジャンケット業者
まず、ジャンケット業者はランドカジノの一室を借り、そこでバカラなどのカジノサービスを提供しています。
この部屋がVIPフロア(VIPルーム)と呼ばれる特別なエリアとなるわけです。
カジノからテナントを借りてそのカジノ施設の内部で別の小規模なカジノを開いているようなものですね。
そのためランドカジノ側が運営する一般フロアやハイリミットフロアとは別サービスと言えます。
そして部屋を運営するジャンケット業者に属するジャンケットがついていなければその部屋に入ることすら厳しくなります。
カジノの一室の賃貸料金
同じ施設内にありながらカジノ運営側と競合関係になるジャンケット業者のVIPルーム。
そんないびつな関係のジャンケット業者が借りるVIPルームの賃料はどれくらいなんでしょうか。
借りるのは部屋とテーブル。
そしてテーブルのレンタル料は5000万香港ドル(7億円)。
1部屋の10台前後テーブルを並べることが主流なので年間70億円相当の負担となります。
(部屋代はなし)
となると年間でテーブル一台あたり7億円以上を稼がないといけないわけですね。
さらにジャンケットはVIP客の賭け金支払いもあるため、プラスαで資金を用意しておかなければいけません。
よってVIPルーム1部屋あたり100億円程度は必要になるようです。
VIPルームからの売り上げは?
VIPルーム1部屋の収益は数百億~1000億円ほどになります。
1部屋借りるだけでこれだけのコストがかかってしまうと「本当に儲かるのか?」と心配になる人もいると思いますが、全く問題ないわけですね。
ジャンケットエージェントの稼ぎは?
VIPルームに連れてきた客の賭け金の約1%がバックマージンとして懐に入る仕組み。
マカオの法律では0.9~1.25%となっています。
ジャンケットを利用するハイローラーたちの多くは1億円以上使う人が多いため、そこから得られる額も大きなものとなります。
カジノ業者はなぜ自分でVIPルームを運営しない?
売り上げを見ると賃料より圧倒的に儲かるVIPルーム運営。
カジノ業者が自社でやれば利益総取りになるにもかかわらずなぜ運営しないんでしょうか。
これは中国の制度が関係しています。
アジア系のランドカジノが中心となりますが、ハイローラーの多くは中国人富裕層です。
そして中国では一定額以上のお金を海外へ持ち出せないようになっています。
(人民元なら2万元/33万円ほど)
そこでジャンケットが間に入って資金移動のお手伝いをするわけです。
決して合法とは言い切れないサービスなのでカジノ業者側もジャンケット頼りになる構図ですね。
ジャンケットを介した資金移動の流れ
- 中国人富裕層がジャンケット業者からチップ(現金でなく物品扱い)を購入
- ジャンケットの口座へ資金を振り込む
- VIPルームでチップとして引き出す
- チップは現金化できないため賭けに使うしかない
- 勝って受け取ったら晴れて海外へ現金持ち出しとなる
このように否が応にもVIPルームで使うしかなくなる仕組みになっているため、高い賃料を支払っても儲かるようになっているんです。
これは完全にマネーロンダリングとして使えてしまいますね(汗)
ちなみにこの流れは、日本のパチンコ・パチスロで使われている三店方式っぽくも感じます。
ただし、パチンコ・パチスロで数千万・億単位のお金を使うのは大変ですが、カジノならそれも簡単です。
まさに資金洗浄にうってつけと言えるでしょう。
ジャンケット(Junket)の具体的な仕事内容について
上で触れたようにVIP客の資金を融通することが大きな割合を締めますが、ほかにもさまざまな仕事を担っています。
ジャンケットが提供する無料サービス
- 資金送金
- 資金の貸し出し
- チップを預かる
- 宿泊費負担
- 飲食費負担
- プライベートジェットを出す
- リムジンで送迎
- ホテルのスイートルームを用意
- 日本のAV女優を同伴させる
など
入国から出国までのすべてのシーンでお金の支払いなどをすべて負担してくれます。
ジャンケットを利用するハイローラーの多くは先にジャンケット側の口座に1億円以上振り込んでからやって来ます。
そしてそこから3%ほどを接待費として利用するわけです。
こんなことができるのも、VIPルームでしか使いようがないチップを買ってもらっているからこそですね。
ちなみに日本のAV女優同伴についてですが、中国では日本のAV動画が人気でよく知られている女優さんもいます。
そこでジャンケットエージェントがそういったサービスを提供した例もあるようです。
ラスベガスやシンガポールカジノでのジャンケットの役割
マカオやフィリピンカジノのようにジャンケットにフロアを貸し出して運営される形態はとられていません。
ジャンケット的な役割はカジノ側の専属スタッフが担っています。
他の業者が間に入っていない分、こちらのほうが健全ですね。
もちろんハイエンドな世界だけに裏でどんなやり取りがされているのかは知る由もありませんが。
日本のIRカジノにジャンケットは採用される?
採用されないでしょう。
日本ではジャンケットに部屋を貸し出して賭博サービスを提供されること自体、法律違反となります。
IRカジノを運営できるのは国に認められた自治体のみです。
その自治体が運営するリゾート施設内でのカジノが合法と言うだけ。
たとえその施設内であっても、自治体以外の組織が賭博サービスをやっていたら賭博罪で摘発されてしまいます。
よってジャンケット業者が関わる余地はないでしょう。
もちろん収益の大半を担うハイローラー客向けのVIPサービスは用意するはずです。
でも、それは運営側によるスタッフが提供するものとなるでしょう。
日本ではまだまだIRカジノに対する風当たりも強く、マネーロンダリングなど黒い部分が見え隠れするジャンケットと関わってしまうと叩かれやすくなります。
そのため表立って提携することはないと言えるでしょう。
ジャンケットとマネーロンダリング
ジャンケットの運営するVIPルームは閉じた世界。
先に触れたようにマネーロンダリングが可能です。
もちろんVIPルーム以外でもそういったことは行われているようです。
参考書籍によると、中国の富裕層などお金を持っているVIPがマネーロンダリングをするために利用しているパターンが多いですね。
ジャンケットを利用する中国富裕層とは?
中国の富裕層は人口の1割いると言われていますが、その多くは公務員です。
公務員は中抜き文化が浸透していて、寄付や公共事業などの資金が割り当てられると、公務員たちが半分以上中抜きしてしまう文化があるとのこと。
最初に受け取った人が半分抜いて、下にまわしたらそこでも半分抜いて・・・と続いていき、本来使われるべきところに届くころにはほとんどなくなっているといった状態。
これにより公務員はお金持ちになっているんです。
そしてこの中国の閉鎖的な仕組みがカジノを使ったマネーロンダリングの元凶になっています。
中国国内ではギャンブルサービスは禁止されていますし、お金の海外持ち出しも厳しく制限されています。
(人民元なら2万元/33万円ほどしか持ち出せない)
最近だと仮想通貨が誕生して資金持ち出しに利用されていたようですが、中国国内ではそれも早い段階で規制されています。
そこでジャンケットを利用するわけですね。
世界一のカジノ市場であるマカオも中国なので、ジャンケット業者への支払いはあくまで国内でのやりとりとなります。
そこで使う用のカジノ資金を何かを購入した形でジャンケット側へ振込みます。
あとは現地でチップとして受け取るわけです。
そしてゲームに使って配当を受け取れればその分を現金化することで資金洗浄(マネーロンダリング)完了です。
この仕組みがあったからこそマカオのカジノは世界一になれたと言えるでしょう。
ただし最近はこの流れも難しくなり、ジャンケット業者が摘発されるニュースが多くなっています。
ジャンケット業者に関する重大ニュース
2021/11/27 サンシティグループ(太陽城集団)幹部11名を逮捕
2021年11月、このページの参考資料として使わせてもらった本の著者が所属していたマカオ最大手のジャンケット業者「サンシティグループ(太陽城集団)」の会長や幹部ら11名が逮捕されました。
違法賭博やマネーロンダリングの疑いありとして中国公安当局から逮捕状がだされ翌日にはマカオ警察に逮捕されています。
その結果、同月末までにサンシティグループ(太陽城集団)が運営していたマカオ内のすべてのVIPルームが閉鎖されています。
この影響から別の大手ジャンケット業者「タクチュングループ(徳晋集団)」も多くのVIPルームを閉鎖する事態に。
マカオのカジノ収益の過半数(8割ともいわれる)はハイローラーが落とすお金であり、その収益源の大きな割合を占めていたジャンケット業界へのダメージは計り知れないものとなっています。
またVIPルームからの収益がなくなるマカオのカジノ業者側も今後は収益を大きく落とすことになりそうです。
2022/1/18 マカオ立法会がカジノ関連法案を公表
今回マカオ立法会(議会)が公表したカジノ関連法案はジャンケットの目的を明確化させることも目的としている。
主な内容は以下のとおりです。
- カジノ運営業者の認可数は6のまま維持
- 有効期限20年→10年に短縮
- 1業者あたりのテーブル数や機械の数に上限を設定
- ジャンケット用の部屋は禁止
- ジャンケットとの利益折半も禁止
- ジャンケット業者への免許交付は継続
- ジャンケット業者が使えるのは認定カジノの内1か所のみ
- 規制当局が3年ごとに審査
ジャンケット業者にとっては逆風とも言えるこの法案。
マネーロンダリングで利用されていた可能性が高いため仕方ないとはいえ、今回の厳しい対応でマカオのカジノ産業も一時的にマイナス成長になることは否めないでしょう。
ただし一般フロアへの影響はジャンケットほど大きくはないため、平場を活性化させつつ世界一のランドカジノとして再興してもらいたいですね。
2022/1/28 マカオのジャンケット業者が42社で過去最低に
コロナ禍による客足の減少、中国当局による規制によりマカオのジャンケット業者は過去最低となる42社に減少してしまいました。
今後も改善の見込みは薄いでしょう。
2023/1/6 マカオのジャンケット業者が36社に減少
前年に最低数を更新したジャンケット業者でしたが、2023年に入りさらに6社減り36社になっています。
まだまだこの流れは変わらなさそうですね。
2024/1/3 マカオのジャンケット業者が18社に減少
前年に過去最低を記録した次の年にはさらに半減し、18社にとどまっています。
カジノ側もVIP客より一般層の獲得に力を入れているようで、現在は7割ほどが一般客からの収益とのこと。
今後ジャンケットはなくなっていきそうですね。
オンラインカジノとジャンケット
1996年に世界初のオンラインカジノ「インターカジノ」が誕生しました。
それから遅れてること18年後の2014年。
この年にはじめて日本語対応のオンラインカジノ「ベラジョンカジノ」が誕生しました。
それからさまざまなオンラインカジノ関連の事件も起こり成長の芽が摘まれるかと思われましたが、いまではすでにプレイヤー数は100万人をゆうに超えています。
さらに公共電波を使ったテレビCMまで流れているほどに成長してきました。
そんなオンラインカジノの中にはハイローラー向けのVIPサービスを充実させているところがあります。
ではそれらのVIPサービスにジャンケット(Junket)が関わっているのでしょうか?
オンラインカジノの中にはマカオやシンガポールなどのランドカジノに関わっているところもあるようですが、表立ってジャンケット(Junket)がサービス対応すると明かされているところはありません。
VIPサービスが完全招待制のオンラインカジノであればジャンケットの運営会社と提携してサービスを導入してる可能性も考えられますが詳しい情報は明かされていません。
とはいえマカオで起こった大事件のようにランドカジノからの収益が大きく減少してしまった場合、次の収益源としてオンラインカジノのVIPサービスを提供していくことは考えられるでしょう。
VIP対応のノウハウを持っていることは大きな財産ですし、それを活かした事業展開をする上で有力候補と言えるのは間違いないでしょう。
ただしマネーロンダリングのことを考えるとオンカジ側も関係を持たないほうが信頼性は高くなりそうですね。
ランドカジノでのVIP待遇の大半を担ってきたジャンケットとその業者たちの今後はどうなるのか。
ブラックなことはやめてよい部分はしっかり残してもらえたらいいですね。
日本のジャンケット仲介業者は?
大阪に「NINE & PICTURE’S 株式会社」というカジノジャンケットがあります。
会社概要ページに提携先のカジノが一覧で載っているので、それらカジノへ行くなら依頼してみましょう。
マカオとラスベガスが多いです。
\行く前にオンラインカジノで予習がおすすめ!/
まとめ
カジノで活躍するジャンケットについて紹介しました。
一般人には想像もできない世界で働くジャンケットエージェントたち。
お国の事情などを利用して大きな利益を上げていたことがわかります。
ただし世界一のランドカジノだったマカオはいま厳しい状況になっています。
オーストラリアやシンガポール、フィリピンなどアジアには多くのカジノがあるため、ジャンケット業者がなくなることはないと思います。
ですが業界最大手だったマカオのジャンケット業者が苦境に立たされていることから他社に波及しないとは限りません。
とはいえVIPサービスのノウハウは今後も活かしてもらいたいもの。
マネーロンダリング的なブラックサービスはなくしていきつつ、今後も魅力的なVIPサービスを提供していってもらいたいですね。